折れない心 ーrescue J guy's blogー

元航空自衛隊のRESCUEパイロットが自分のやりたいこと、自分が何ができるかを発見できるようになる、折れない心(レジリエンス)について4つの原則を中心にお話ししてます。また、航空関連ニュースに対しての個人的な感想や意見もアップしています。

群馬県 ヘリ墜落 東邦航空 パイロット視点での現在時点での墜落原因推測

平成29年11月8日午後2時半ごろ、東邦航空(本社東京)のヘリコプターが群馬県上野村に墜落しました。

 

まず初めに、事故でお亡くなりになった4名の方のご冥福をお祈りします。

 

9日(朝)現在でのネットで拾えた情報を集めましたので参考にしてください。

 

 

ネットの情報

 

時事通信

www.jiji.com

 

www.jiji.com

朝日新聞

www.asahi.com

 

産経新聞

www.sankei.com

news.livedoor.com

 

マスコミ報道から得た情報から

 

夕方のテレビニュース報道で今回の事故を知り、その後21時のNHKニュース、22時の朝日テレビニュースを見比べて情報がどのように伝えられるかを見ていました。

 

夕方のニュースで事故を知った時は、あまり情報が多くなかったので当該ヘリが群馬県上野村に何か仕事があり、その飛行中に墜落したと思っていました。

 

その後の報道で当該ヘリの行程がわかりました。

 

墜落したヘリコプターの行程

NHKニュースから引用します。

東邦航空によりますと、墜落したヘリコプターは8日午前8時31分に長野県松本市松本空港を離陸し、午前9時から11時10分まで長野県の美ヶ原で送電線の工事に使う資材などの輸送を合わせて20回行ったということです。

その後、山梨県早川町新倉に移動し、午後0時20分から1時45分まで同じく送電線の工事に使う小型のパワーショベルなどの輸送を合わせて3回行って作業を終えました。

その後、格納庫がある栃木県に戻るため午後2時3分に早川町のヘリポートを離陸したということで、ヘリコプターは、栃木までの飛行中に墜落したと見られます。

東邦航空でヘリコプターの機長を務める佐藤宏文さんは「ヘリコプターの事故は、物資輸送などの作業中に多く、今回のような移動中の事故は非常に珍しい。天候はよかったので、機体か、人為的な問題ではないかと思う。北川機長とは入社も近く非常につらいです」と話していました。

 

 このように、墜落したのは作業を終え山梨県から栃木県に向かっている時だとわかりました。

 

地図上で確認しても、概ね直線経路上に墜落した場所があります。

 

墜落した原因で有力な推測

地元住民の方の多くの証言がありましたが、この証言がパイロットとしてはこのヘリコプターになんらかのトラブルが発生した、または発生する予兆があった(警報の点灯)と確信しました。

 

NHKニュースによる証言内容

消防によりますと、現場近くの広場にいた男性は「西から東の方向にヘリコプターが来たと思ったらUターンし、西の方向に向かい始めたところで高度が落ちた。そして機体の後ろの部品が飛び散るように見え、その後、回転しながら落ちた」と話しているということです。

 

 

ヘリコプターが直ちに着陸しないと墜落する時

 

トランスミッションの故障

これはエンジンの出力をローターにつなげるトランスミッション(駆動軸)がその機能を失うことです。

 

ヘリコプターにとっては、致命的な故障です。

 

飛行機であればエンジンの故障が致命的になるかもしれませんが、ヘリコプターの場合はこのトランスミッションが致命的な故障になります。

 

ですので、トランスミッションが故障する予兆が感じられるように、警報灯が取り付けられており、この警報灯が点灯した場合は速やかに着陸することが求められます。

 

もちろん警報灯の誤信号の可能性もあります。

 

ただ、2次的兆候があった時は迷うことなくすぐに着陸です。

2次的兆候というのは、例えば機体の振動、異音、異臭などが考えられます。

 

墜落したヘリに何が起きたか

 

僕は、今回の目撃情報とパイロットがベテランであったことから、事故に至った経緯を次のように推測しています。

 

1 飛行するのに重大な影響がある警報灯の点灯(おそらくトランスミッション

2 目的地までの飛行は危険と判断

3 すぐに着陸できるところを選定

4 旋回して着陸場を確認しながら、すぐに着陸できるように高度を下ろす

5 着陸経路上にあった送電線(もしくは索道)にローターが当たる

6 ローターへの急激な抵抗により、テール部分がその負荷に耐えられなくなりテール折損

7 機体はメインローターの反トルクにより回転しながら落下

 

(11月9日21:00追記)

テレビ報道から目撃情報がさらに増え、事故に至った経緯が少しづつわかってきました。僕なりの新しい推測です。

1 テールギアボックスのチップディテクターのコーションライトが点灯

2 1ほぼ同時に振動、機体後部からの煙、異音が発生したため、機長は緊急着陸を決心

3 着陸するために風に正対する方向に向けつつ、着陸敵地に向けて高度を急激に下ろす。(一刻の猶予もないため)

※この状況を見た住人がいつも見ない低高度で飛行していたと推測

4 着陸適地(おそらく河川敷か民家のない道路上)を見つけ継続して降下

5−1 着陸進入中に送電線または斜面の気にメインローターが当たり、テール部分が破断、テールは河川敷に脱落し、機体は回転しながら落下

5−2 着陸進入中にテールギアが破断しテール部分が脱落、機体は回転芝がら落下し送電線に接触、切断し墜落

 

目撃情報を聞くと5−2のような気がします。

 

確証となる動画

Youtubeでローターが何かに接触した時に何が起きるか。参考となる映像を見つけました。

10:00のところでヘリコプターの2機編隊が飛行してきます。

そして、2機のローターが接触したのち、テール部分が折損して墜落する様子が映っています。

 

15:00頃からの映像では、後方ローターのトランスミッションが故障した時のテール部分の破断する様子を写しています。

www.youtube.com

 

不確かなこと

 

ここまで推測してきましたが、確証が得られないのが

1 送電線(索道)に接触したから墜落したのか、

2 他の原因で墜落した機体が送電線を切った

のどちらかなのかということです。

 

目撃情報からは1の状況であると思いますがなんとも言えません。

(11月9日21:00追記) 

新目撃情報ですと墜落した結果送電線を切った可能性が高いです。

送電線は本当に怖い

仮に着陸するための経路上で送電線に引っかかったとしましょう。

でも、知らない人からすればなんでよけれなかったの?と思うかもしれません。

 

でも、僕は正直いうと送電線は

 

そこにあると分かっていれば避けられる。

でも予想しなかったところにあると避けられない。

 

と思っています。

 

例えが悪いのですが、蜘蛛の巣を思い浮かべてください。

 

蜘蛛の巣があるところはわかりやすので、避けて通ることができると思います。

 

でも、蜘蛛の巣ではなく、蜘蛛の糸だけが目の前にあった時に気づける人がどれだけいるでしょうか。

 

僕はしょっちゅうう蜘蛛の糸に引っかかります。

 

未知の場所に着陸

これは、かなりリスクを伴います。

 

それでも、いつ故障して墜落する恐れがある状態で飛行し続けるよりも、このリスクを取ってでも着陸した方が安全です。

 

未知の場所に着陸する時には、その前に着陸する場所を確認(偵察)することが必須です。

 

ただ、今回のように速やかに着陸しないといけない場合は、悠長に確認できないこともあります。

 

終わりに

今回、空自浜松救難隊のUH-60J墜落事故に引き続気発生した事故。

 

関係者はもちろんのこと、パイロットとしては心痛みます。

 

誰も事故を起こしたくて飛んでいるわけではないです。

 

緊急時の対処訓練も行なっています。

 

ただ、訓練をしていたから必ず事故は起きないかというと、そうでもないのが実際のところです。

 

事故の連鎖を止めるために、安全に対する意識を持ち続けなければいけないと強く感じました。

 

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