折れない心 ーrescue J guy's blogー

元航空自衛隊のRESCUEパイロットが自分のやりたいこと、自分が何ができるかを発見できるようになる、折れない心(レジリエンス)について4つの原則を中心にお話ししてます。また、航空関連ニュースに対しての個人的な感想や意見もアップしています。

折れない心を身につける 社会編 その③ 東日本大震災の救助活動で感じた社会の大事さ

元空自レスキューパイロットが折れない心を伝えています。

 

先日、ロシアで投稿された動画が面白かったので、まずは共有します。

最近、わざと題名に誤字をつけて配信するのが主流なのでしょうか?

私の場合は、本当の誤字なので気付いた方はどんどんメッセージで指摘してください!

news.biglobe.ne.jp

 

 

ヘリコプターが道に迷うなんてありうるの?

そもそも、ロシアのパイロットって腕が悪いのでは?

 

なんて思いますよね。

 

少しこの記事をパイロット的に考えてみると、このパイロットは普段は何事もなくフライトして目的地まで行き着くことができていたと思います。

 

今回の動画を見る限り、視界が限定されていますよね。

 

ですので、普段見えている目標がわからず、どっちの方向に目的地があるかわからなくなったのでしょう。

 

日本人に言わせると、お粗末な飛行準備、と一蹴されてしまうことでも私はあえて取り上げてみたいと思い、ブログにまとめてみました。

 

空に道がある

空にも道があるんです!

見えませんか、あの辺に交差点があって・・・・

 

すみません、目にはみえません。

 

でも、最近はこれをみながら操縦できるんですね。

 

コックピットの計器盤には、iPad並みの高性能はディスプレイが装備されていて、地図情報に合わせて、航空路を表示できるんですね。

 

この航空路は、主に旅客機などが空港から空港に行くときに使います。

 

ヘリコプターの特徴

ヘリコプターは元々、飛行場のないところで運用されることが多いので、航空路などのように定められた道を飛行することもありませんでした。

 

性能自体も良くなかったので、低い高度で遅い速度で飛ぶものでした。

 

近年、ヘリコプター用の航空路を整備する検討もあったようですが、未だ整備されていません。あると便利なんですが。

 

ヘリコプターパイロット(ヘリパイ)の特徴

ということで、ヘリパイは道無き道を行く人種です。

 

自分の行く道は自分で決めるんだ!

 

というか、自分で決めないと進めないと言った方がいいかもしれません。

 

そして普段はあまり高いところは飛ばないので、たまに高いところを飛ぶと楽しかったり、怖かったりする人たちです。

 

ちなみに、私は高所恐怖症です・・・

 各自衛隊ヘリコプターパイロットの面白い特徴とは

ひとえにヘリコプターパイロットと言っても、働くフィールドが違うのでそれぞれ特徴があります。

 

私の知っている範囲でその特徴を紹介します。(全くの私見です)

陸上自衛隊ヘリパイ

陸上自衛隊のヘリコプターは、あくまでも普通科(歩兵)を運ぶものであったり、地上戦等の支援をするものです。

 

ですので、その活動は地面とともにあり!です。

 

ですから、演習場に着陸したら敵に見つからないように偽装網で機体をおおいます。

 

そのためには、穴も掘ります。(空自パイロットは真似できません!)

 

昔は、道路を見ながら飛ぶのが主だったそうですが、最近は航法機材が良くなってきたので、少し変わってきているはずです。

海上自衛隊ヘリパイ

海上自衛隊のヘリパイは、主たる任務が敵の潜水艦を見つけるのが任務です。

 

他にも、救難(これは廃止になる見込み)や輸送などがありますが、主なフィールドは洋上なので地図を見て飛行することは少ないです。

 

昔、海上自衛隊の救難部隊を研修したときに驚いたのが、コックピットに携帯カーナビ「ゴリラ」が搭載されていたことです!!!

 

正直、あれば便利なので羨ましかったです。(我々は諸事情により積んでませんでした)

 

どうして搭載しているんですか?と質問した答えが、

 

「えっ?これがなくて陸上部をどうやって飛ぶの?」

 

と、質問返しされちゃいました。

 

うーん、異文化コミュニケーションは大事です。

 

航空自衛隊ヘリパイ

航空自衛隊のヘリパイは、元々が飛行機で訓練を受けたのちにヘリコプターの訓練を受けるので、他自衛隊のヘリパイよりもいろんな意味で別格です。

 

しかも、航空自衛隊が根本的に他の自衛隊と違うのは、

 

「主たる兵器が航空機」

 

ということで、航空機を扱うパイロットが主として戦う組織なんですね。

 

陸上、海上自衛隊パイロットにから羨ましがられるのはこの点です。

 

彼らは、主たる任務を支える立場、航空自衛隊は航空部隊が主。

 

ということで、戦闘機に乗ったことがあるヘリパイもいるので、その点が他の自衛隊ヘリパイと経験値が違います。

 

道路地図がないと仕事ができない!

道路地図ないと仕事ができない人がいます。それが、救難ヘリコプターパイロットです。

 

でも、いつもは必要と言うわけではないんですよ。

 

必要なのは、土地勘のないところを準備もなく飛ぶときです。

 

それは、災害派遣任務の時に一番感じます。

 

航空自衛隊パイロットは普段どんな地図を使っているの?と言う疑問にお答えします。

航空図とは?

これが一般の図書として買える、日本航空機操縦士協会発行の区分航空図です。

東日本大地震の時は、ヘルメットだけ持って救助現場にいったので、こういった便利なものは持たずに飛んでいました。

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ちなみに、北海道はでっかいので一枚です。(それでもはみ出てる・・・)

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それでは、航空自衛隊で使っている地図は?と言うと、ニュース記事で地図を持った写真があったので、記事ごと紹介します。

www.sankei.com

上のリンクを開くと、一番初めに出てくる写真で女性が手に持っているのが航空自衛隊で使用している航空図です。

 

記事で読んでもらえばわかるのですが、この女性は元々はパイロットになる道を歩んでいたのですが、訓練中に航法士(ナビゲーター)になることを決め、今でも現役で空を飛んでいます。

 

私の1期後輩になり、航空自衛隊の航空学生 女性1期生です。私の代までは男性だけでしたが、この時期から女性にパイロット職の門戸が開かれました。

 

航空自衛隊は、その活動エリアが世界中なので、その活動エリアにあった場所の地図を入手して飛行します。

 

戦闘機パイロット

活動エリアの主たるところが洋上になります。

 

国土の遠いところで戦いますので当然です。

 

普段の訓練エリアもほぼ洋上部ですね。

 

ですので、普段は地図を見ながら飛ぶことは少ない職種です。

 

輸送機パイロット

主たる任務が国内の輸送になるので、旅客機と同じように航空路と呼ばれる定められた道を飛ぶことが主となります。

 

海外運航するときも同様です。

 

ただ、輸送任務も特殊なものになると、ある地域に空中投下したり、陸上自衛隊空挺部隊を展開させることがあるので、普段から地図を使用した航法を訓練しています。

 

たまに、低高度を飛行している輸送機とすれ違ったりしていました。

 

救難機パイロット

 

主たる任務が戦闘機パイロットの救助ですので、洋上を飛ぶときはあまり地図は使わないです。が、陸上部、特に山中での任務も想定されているので地図は必需品です。

 

捜索機は、ジェット機なので航空路も問題なく飛びますし、山の中も飛ぶので使う地図は沢山あります。

 

救助機のヘリコプターは、航空路はなんとか飛べるくらいの能力なので、一応地図は持ちますが、メインとなるのは山の地図など細かいモノがわかるものです。

 

私は、一度だけ海外での訓練があったので地図を探したのですが、とうとう見つからずに米軍が発行している1/50万の地図をコピーして持っていった記憶があります。

 

でも、地図はあっても役に立たなかったことがあったのです。

 

それが東日本大震災で患者空輸任務を受けたときでした。

 

道路地図があっても仕事ができなかった・・・・

東日本大震災の任務に就いたときは、実は前述した海外での訓練に出発する直前だったんです。

 

なので、必要な装具などで事前に運べるものは、ヘリコプターに搭載して海上自衛隊輸送艦ですでにインドネシアに向かって航海中でした。

 

地図はもちろん持っていませんでしたが、持っていたのは夏用飛行服と個人のヘルメットのみでした。

 

そんな中、数名の国外訓練要員と共に、出発予定だった愛知県の小牧基地から茨城県百里基地に輸送機で運ばれていきました。

 

到着するとすでに全国の救難部隊が百里基地集結し、救助活動をひっきりなしに行なっていました。

 

彼らも、必要な地図を持っていなかったので百里救難隊にあるものを使用していたと思います。我々が到着したときは、使えそうな地図は1/100万しかありませんでした。

 

この地図、主に航空路を飛ぶときに使うものなので、地形は大まかな都市名と山や湖しかわからないものです。

 

ないものはないので、それで代用して飛行しました。でも、安心していたのは、大体の救助機にはその活動エリアで使える道路地図を搭載しているのです。

 

私も救難部隊にいたときは、常に最新の道路地図を搭載できるように、少ない予算をやりくりしていたものです。

 

厳しい任務でしたが、緊急時に落ち着いて行動できるように訓練されているので、淡々と飛行していました。

ある命令が来る前までは・・・・・

 

緊急患者空輸

私が機長で飛行していた時のフライトで石巻あたりを飛んでいた時です。

 

ある学校におられた年配者や病院へ行く必要のある人を赤十字病院まで搬送した後、百里救難隊から無線通信が入りました。(実際は、通信量が膨大で自分達のコールサインを聞き逃さないようにするのが苦労しました。)


その通信内容とは、ある病院にいる患者を違う病院まで搬送することでした。

みなさん想像してください。いきなり、土地勘のないところで病院名を言われてもどこにあるかわかりませんよね?

 

そこで活躍するのが、道路地図なんです。命令する方は、情報元からその場所を詳しく聞きます。わからない場合は、インターネットで調べます。

その後、その場所を道路地図の何ページのどの辺りにあることを調べて、その情報を航空機に無線で連絡したりします。

 

同じ道路地図であることが大前提ですが、大手の○○リンを使用していることが多いです。

 

気の利いた人なら、ネット地図から緯度経度を調べて、道路地図情報と合わせて教えてくれます。そうすることによって、機体のコンピューターにその場所を入力すれば、大まかな位置まではナビゲートしてくれるからです。

 

話が脱線しますが、この機体のコンピューターにはGPSが連接されているのが最近では当たり前でしたが、未だに搭載していない機体もありました。

 

話を元に戻します。それらの情報を元に、知らない土地でも病院などを特定して現場に向かうのですが、この時ばかりは途方にくれました。

 

何故ならば・・・・

津波で家屋と道路がよくわからなくなっていて、道路地図と地形を照合できない・・・

からでした。

 

経験豊富なメンバーでもあるものがなくなっていたら、どこが病院なのかわからないのです。

 

近くにあるのはわかるのに、特定できない!焦りましたが、ある方法を思いつきました。

 

そうです、冒頭で紹介したロシアのヘリがやった地元の人に道を聞くことです

 

でも、着陸はできません。地上に被害を与えてしまう可能性がある状態だったので、ホイスト(救助するのに使用するウィンチ)で救難員を地上に降ろして、近くにいた住人に道を聞いて行くように指示しました。

 

降りていった救難員は、住民と接触してある方向を指差していましたので、概ねの場所を入手したようでした。

 

救難員をヘリコプターに収容し、聞いた場所にある病院に向かい、無事病院を発見するに至ったのです。

 

社会があることの意味

前置きがだいぶ長くなりました。

 

今回の体験から色々な教訓を得たんですが、社会という切り口で考えてみました。

 

二つあります。

 

一つ目の意味

社会という集団がないとある個人や場所の位置を表現(特定)することができない。

 

ある個人を紹介するときに、あなたならどのように紹介しますか?年齢、性別、身長、体重はわかりますよね。

 

その人、どこに住んでいますか?

 山?海? 北の方向に行って2つ山を越えたところの麓?

 

どこで仕事していますか?

 あそこのビルがいっぱいあるところの、中くらいの大きさのところ?

 

何かしら比較したりしないと説明がつかないですよね。

 

なので、人が集団で生きて行く上では、この社会という仕組みがないと不便というか生きていけないんですね。

 

この話をすると私は無人島で一人で生きている、という方もいるかもしれません。

 

よく考えてみてください、その島、どこの国の島ですか?隣国の島に勝手に住み着いていたのが見つかったら、自由の保障なんてないですよね。

 

日本という社会の中で、一人で生きている感じを味わっているだけなんですね。

 

社会とは、我々の生活そのものであるということが言えます。

 

ですので、この自分の居場所である社会、居心地が良い社会の方がいいですよね。

 

狭い範囲で表現すると、コミュニティーとも言います。

 

自分を表現するための社会、それは一つではないはずです。

 

ぜひ、居心地の良い自分の居場所を見つけてみてください。

 

二つ目の意味

自分が行きたいところがわからなければ、人に聞けばいいということ。

 

今回、石巻での患者空輸で病院の場所がわからず、人に聞くことをしなかったら病院の場所は最後までわからなかったです。

 

でも、それを知っている人に聞くことさえできれば、自分の進む方向がわかるのですね。

 

これを普段の生活でもぜひやってください。

 

仕事で悩み、自分ではなかなか答えが出ない。

 

そんなときに、誰かを頼って質問してみると、ものの数分で解決することも多くないですか?

 

聞きにくい職場環境であったり、前に上司に質問したら自分で考えろと怒られたり。

 

なかなか難しいのも事実です。

 

聞き方を工夫することは必要です。

 

自分が上司になったときに、後輩にこう聞かれたらいいなー、というようなイメージです。

 

先輩上司にうまく聞く方法は、また別の機会に書きます。

 

まとめ

折れない心の4つの原則 社会性

 

自分たちは、社会的な生き物であることを再認識して、その社会が良くないと幸せに生きて行くことができないのですね。

 

また、いまいる社会を変えなくても自分が気持ちよく行きられる社会を作ってもいいと思います。これは、国会議員になって国をよくするという大きなことから、地域のお茶会を開催して日頃の情報交換などする、という身近なことでもいいです。

 

会社勤めで時間がない人でも、朝活で違う会社の人と繋がってみたり、公務員でも地域の行事に参加してみる。そんなことでいいのです。

 

その繋がりが、自分の心が折れそうになったときに、支えとなってくれるのです。

 

どんな社会が自分に合っているかはわかりません。まずは、色々と行動してみて、自分に合った社会を見つけて行きましょう。